Windows PCに関心のある方であればほとんどの方がご存知だと思われるノートPCといえば、Lenovoの「ThinkPad」シリーズではないでしょうか。
現在広く使われるパソコンの原型であるPC/ATを作り出したIBM。同社が1992年に販売を開始したThinkPadは、重厚なデザインかつ質実剛健なボディ、トラックポイントの採用、こだわりのキーボードなど、ビジネス用ノートPC市場においてもっとも高い品質でユーザーに提供され続けたシリーズであったと思います。
そんなThinkPadがIBMのPC事業ごとLenovoの手に渡って15年を目前とした昨2019年に発売されたのが、エントリーモデルの弟分「ThinkBook」シリーズです。今回はその最新版の15インチモデルにふれる機会を得たため、レビューをお届けしてみたいと思います。
圧倒的なコストパフォーマンス
事の起こりは個人事業者の知人から受けたある相談でした。いわく「Windows 7サポート終了に伴いノートPCを買い替えたいが、さっぱりわからない。代わりに調達と初期セットアップをして欲しい」とのこと。日頃お世話になっている方なので一も二もなく承諾しました。
そんなわけでまず要件を整理したところ、以下のようなスペックがあれば良さそうです。
- Windows 10 Pro搭載
- Microsoft Office 搭載(Word、Excel、PowerPoint必須)
- 15型以上のディスプレイ
- テンキー搭載
- USB Type-Aポートは3つ以上搭載(多いほど良い)
- HDMIポート搭載
- RJ45(LAN)ポート搭載
- Intel Core i5以上
- メモリー8GB以上
- ストレージ容量256GB以上
- 光学ドライブはある方が望ましい
同時に、業務で使われるものなのでサポート体制など含め信頼性が高いもののほうが良いだろうと考え、とりあえず大手メーカーに絞ってリストアップをしてみました。その結果が以下のとおりです。
メーカー | Lenovo | HP | DELL | 富士通 |
---|---|---|---|---|
製品名 | ThinkBook 15 | ProBook 450 G6 | Vostro 15 5000(5590) | LIFEBOOK WA3/D3 |
型番 | 20SM000RJP | カスタマイズモデル | カスタマイズモデル | カスタマイズモデル |
実売(税・送料込) | ¥ 103,290 | ¥ 131,780 | ¥ 127,980 | ¥ 171,888 |
定価(税・送料込) | ¥ 162,800 | - | ¥ 171,480 | ¥ 217,580 |
保証期間 | 1年 | 1年 | 1年 | 3年 |
OS | Windows 10 Pro 64bit | Windows 10 Pro 64bit | Windows 10 Pro 64bit | Windows 10 Pro 64bit |
Office | Office Home & Business 2019 | Office Home & Business 2019 | Office Home & Business 2019 | Office Home & Business 2019 |
CPU | Core i5 1035G1 1.0GHz | Core i5 8265U 1.6GHz | Core i5 10210U 1.6GHz | Core i5 8250U 1.6GHz |
メモリー (搭載 / 最大) |
8GB / 8GB 1スロット |
8GB / 32GB 2スロット |
8GB / 不明(16GB以上) 不明(2スロット以上) |
8GB / 32GB 2スロット |
ストレージ | SSD 256GB | SSD 256GB | SSD 256GB | SSD 256GB + 1TB HDD |
光学ドライブ | 無 | DVD-ROM / 無 | 無 | DVDスーパーマルチドライブ |
サイズ | 15.6インチ | 15.6インチ | 15.6インチ | 15.6インチ |
解像度 | 1920x1080 | 1920x1080 | 1920x1080 | 1920x1080 |
LAN コネクタ | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 |
Wi-Fi | 802.11ac/a/b/g/n | 802.11ac/a/b/g/n | 802.11ac/a/b/g/n | 802.11ac/a/b/g/n |
Bluetooth | Ver. 5.0 | Ver. 5.0 | 有(バージョン不明) | Ver. 4.1 |
USB | 5個
【内訳】 |
4個
【内訳】 |
4個
【内訳】 |
4個
【内訳】 |
HDMI | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 |
テンキー | 有 | 有 | 有 | 有 |
バッテリー駆動時間 | 9.7時間 | 20.0時間 | 12時間4分 | 7.5時間 |
本体寸法 | 約 363.5x245x18.9mm | 364.9 x 256.9 x 19mm | 356.6 x 237.1 x 17.2mm | 361×244×27.1mm |
本体重量 | 約 1.84kg | 約2.0kg | 1.66kg | 約2.3kg |
※2020年3月時点での情報です。価格はクーポンなどで変動しやすいため、あくまで参考情報となります。
こうして比較してみると、ThinkBook 15は競合製品に対して非常にコストパフォーマンスに優れることがわかります。
HP ProBook 450 G6とLIFEBOOK WA3/D3は、光学ドライブを搭載している点でより要望に沿った製品だと考え、提案に含めました。しかし、CPUが旧モデルであることと1万円以下で外付けBDドライブの購入が可能であることを補足説明したところ、却下と判断されました。
DELL Vostro 15 5000(5590)は、個人的には最もオススメな製品でした。業務で使用する以上、ある程度市場での評価が固まったCPUを採用しているほうが望ましいと考えていたためです。その点ではComet LakeのIntel Core iシリーズを搭載したPCは、発売から数ヶ月が経過していますが、特段の問題は聞こえてきません。
しかし、「そこまでミッションクリティカルな使い方でないし、2.5万円近く安価なら新しいCPUのほうが良い」とのことで、Vostro 15 5000(5590)も没となりました。
結局のところは最後は性能(仕様)に対する割安さがものをいった形で、如何にLenovo ThinkBook 15のコストパフォーマンスが優れているかを表す結果だと思います。
かなり簡素なパッケージ
そんなわけで代理で購入しましたThinkBook 15の様子を見ていきたいと思います。とりあえずいつもの如く外観からのご紹介です。
ちなみにブログへの掲載は依頼者の許諾をきちんと得ていますのでご心配なく(ブログのネタにして良いというのが報酬の一部であったりもします)。
化粧箱はかなり質素な外観です。ビジネスモデルならではの雰囲気が漂っています。
内容物も写真の通り非常にシンプルなものです。
- 本体
- ACアダプター
- 電源ケーブル
- サポート関連の書類
- セットアップガイド
- Microsoft Office プロダクトID
驚いたのはマニュアル(取扱説明書)が付属しないということ。数年前まで他メーカーのビジネス向けPCはうんざりするほどセットアップを行っていたのですが、マニュアルが付属していたように記憶しています。現在のそのメーカーの付属品はわかりませんが、少なくともLenovoはWebからの取得が前提のようです。
なかなかカッコいい外観
続いて外観の様子を見てみたいと思います。はっきり言えばMacBook的なデザインなのですが、価格の割に良いデザインだと思います。
ヒンジ側から撮影した天板です。アルミニウム合金製で高級感が感じられます。また右下の伝統の「Think」の文字列が私には魅力的にうつります。とはいえ、よりシンプルなデザインが好きな人には少しロゴの主張が強いかもしれません。
底面の写真です。貼り付けられたシールの向きの都合上、かわって開放側からの撮影になります。底面は残念ながらプラスチック製で、ネジの目隠しなどもありません。率直に言えば、エントリークラスらしいつくりだと思います。
開放側から見て左側面です。コネクター類は写真左からRJ45(LAN)、HDMI、USB Type-A、USB Type-C × 2、オーディオジャックの順に配置されています。経験上、LANケーブルの脱落防止機構が付いている点は、企業の情シスにとってありがたいポイントだと思います。
オーディオジャックの右隣は「Novo ボタン・ホール」と呼ばれる、先の尖ったもので押せるボタンがあります。ファクトリーリセットに近い位置づけのボタンで、電源オフの状態でこのボタンを押すと、UEFI/BIOSやブートメニュー、Windowsの起動オプションなどを強制的に表示して起動することができます。
更に右隣はストレージのアクセスとパワーの状態を示すLEDランプになっています。
右側面です。写真右隣からセキュリティケーブルの接続箇所、電源コネクター、USB Type-A、SDXCカードスロットとなっています。
SDXCカードスロットの左のカバー部分を取り外すと、更にUSB Type-A (2.0)が表れます。ワイヤレスマウスなどのレシーバーを接続するためのポートとされています。
昨今のモバイルPCとしては豊富なUSB Type-Aのポート数が、過去の資産の継続使用が重視されるビジネスPCらしい印象です。
片手で持ち上げてみた図です。カメラは三脚で固定されています。つまり支える手がブレブレなのです。薄く軽そうな見た目ですが意外に重量を感じるため、軽量性を重視する人には注意が必要です。
開いてみました。反射しないノングレア液晶が好印象です。ベゼルレスとまではいきませんが、左右のベゼルも極細できちんとトレンドを抑えていると思います。
かなり大きく開放することができます。若干180度までは届かない様子。
キーボードはイマイチでも性能は十分
実際に使用してみた上での印象に話題をうつりたいと思います。
起動をしてみました。高速ではありますが、SSD全盛の現在において特別な速さではありません。移行前のPCと比較させてもらいましたが、SATA接続SSDと比較しても体感上はそれほど差を感じないため、PC自体の起動速度が頭打ちになっているのかもしれませんね。
電源を投入後に気になったポイントは液晶ディスプレイの品質です。注文時の書類にも液晶ディスプレイはIPSパネルと記載があるのですが、左右から見ると結構色が変わってしまい、視野角はそこまで広い印象ではありません(写真を掲載できればよかったのですが、色の変化がわかりやすい写真をうまく撮影できませんでした)。
ACアダプターはかなり野暮ったく、もう少しコンパクトで洗練されていると嬉しいように思います。マニュアルを読む限りUSB PD対応モデルの存在も示唆されていますが、本モデルの仕様表には対応が明記されていないため、このアダプターに頼らざるを得ないのが残念です。
テンキー搭載のためホームポジションに合わせてトラックパッドがオフセットされている点は、きちんと考えられている印象です。
しかしキー配列は個人的には最悪に近い印象です。特にタイピング頻度が非常に高いエンターキーやバックスペースキーが、他のキーと密接している点は許しがたいポイントです。ThinkPadのキーボードはデスクトップ向けフルサイズキーボードに劣らないタイピングを目指して開発されたと言われているのに、弟分がこの有り様なのは如何なものなのでしょうか…。
当初電源ボタン右隣のマーク部分が指紋センサーかと勘違いしていましたが、電源ボタン自体が兼ねています。Windows 10の設定上で指紋を登録することで、簡単にログオンすることが可能となります。
内蔵カメラにはハードウェアシャッター機能が付いています(写真は閉じた状態)。スライダーを写真右側に向かって動かすと、撮影が可能な状態となります。ウェブカメラへの侵入など取り沙汰される昨今においては、安心安全な配慮だと思います。
ただしこの内蔵カメラはWindows Hello(顔認証)に非対応です。Windows 10登場から数年が経過し当然対応しているものだと思っていたので、やや残念に感じました。サードパーティから1万円未満で対応カメラが発売されていることを考えると、対応させてもそこまでのコスト増大は招かないと思うのですが…。もっとも要件には含まれていないので、今回のケースでは問題ありません(だから確認もしていなかった)。
Cinebench R20を実行してみたところ、スコアは「1592」でした。4世代前とは言えハイパフォーマンスモデルIntel Core i7 6700HQの「1647」に迫る勢いは、モバイル向けCPUとしてはなかなかの結果ではないでしょうか。
CrystalDiskMarkのスコアです。バージョン7からテスト方式が変わっているようで、過去のデータとの比較ができませんでした(気づいたのは引き渡し後)。とは言え、値そのものはかなり高く、Read / Write問わず安定したスコアが出ているため十分優秀なのではないでしょうか。
まとめ
キーボードオタクの私としてはやや辛辣に書かざるを得ない部分もありましたが、ごく普通にオフィス用途でPCを操作する方にとっては非常にコストパフォーマンスに優れた製品だと思います。
最新のIntel Core i5プロセッサーと8GBのメモリー、256GBのSSDを搭載。USBポート数が多く拡張性に富み、Microsoft Office 2019 Home & Businessを搭載することで利便性も高い。それでいて10万円を切ってくるのは、他社にとってはかなり驚異的な価格設定だと思います。
事務作業用のパソコンをご検討の方は、ぜひ本製品を候補に加えられてみてはいかがでしょうか。